第八章

 大地に炸裂し、砲弾が土砂を巻き上げる。
 鳴り止まぬ轟音の中、音喪砲部隊が防壁の陣形を組み、必死で砲撃からスカル達を守っていた。
 何とか押し返そうとするスカル達の部隊だったが、多勢に無勢、
 加えて味方の被害を殆ど考慮しない相手の砲撃に動きを止められていた。
 そこに正面からザクウォーリアの歩兵部隊。
 テスタメントを筆頭に、男達は剣を振るい、その流れをなんとか留める。
 スカルが相手の剣をシザーアンカーの鎖で巻き取り、斬り伏せたその時、また新たな砲弾が襲い掛かる。
「くっ」
 焦るテスタメントの眼前で、不意に光が砲弾を貫いた。
 光の放たれた方向を見ると、全砲門を構えた江須の姿。
「何とか、間に合いましたか」
「御無事ですか、スカル候!」
 絶突の張り上げた声に、他の男達も息を吹き返す。          
「すまん、助かった」 
 スカルが答えたその時、テスタメントが護衛の壁を弾いて突進してくる三つの影に気付いた。 
「スカル様!」
 テスタメントが声を張り上げる。
 大盾を構えた連なる影。
 三人の闘士ドムトルーパーは大盾に全身を隠し、スカルに向かってヘヴィランスを構えて突撃する。
「ちいっ」
 スカルは先頭のドムを湾刀で弾き、二人目の穂先をかわすが、三人目がその崩れた所を狙いすまして襲い掛かる。
「いけないっ」
 無防備になるスカルを突き飛ばし、明日那がその身を割って入れる。
「明日那!」
 絶突が叫ぶ。 

 ドスッ。

 鈍い、金属を破る音。
 明日那の胴をドムのランスが深々と抉るように貫いた。                      
     


 日の沈みかけた黄金色の空と、その色を映し出す海の中からその光は突然浮かび上がった。
 余りに太く、長大な光の束。
 それは遥か遠く離れた、三隻の吏死低阿から同時に放たれ、伸びていった。 
 曲線を描き、光の奔流は海の上に、大地の上にと光の大河を生み出す。
 もしその光景を上空から見渡せる物がいれば、光の道が黒須暴隠島を中心に、海を覆い隠さんばかりの輪を作っているのが見えた事だろう。
 そして、光の輪がその形を成すと、それぞれの吏死低阿から黒須暴隠島へ更なる光の束が伸びていく。


 吹き荒れる風の流れが変わった事で、玖珠壱は封印の変化に気付いた。
 見れば視界を遮る霧の途切れた向こうに、螺触麗死悪の触手が見える。
「最早猶予はなりませんか」
 呟きながら敵に囲まれぬよう、玖珠壱は高速で飛びぬける。
 正面から襲い掛かる魔物に雷を纏った扇子龍をぶつけて倒すが、上空からの気配を感じて上を向く。
 甲高い鳴き声と共に玖珠壱に襲い掛かる蝙蝠の魔獣。
 勢いよく急降下してくるそれを棍で弾くが、僅かに動きの止まった瞬間を狙い、左右から前後から、一斉に魔獣が突進してくる。
 棍で弾き、蹴り飛ばし、返す動きで突き飛ばす。
 そこに、真下からも迫る影があった。
「ぬうっ」
 下からの攻めを根で抑え、噛み付かれる事は防ぐ。
 しかし、再度上空から魔獣が迫る。
 あらゆる位置からも玖珠壱目掛けて魔獣が襲い掛かり、一瞬その姿が隠れる。
「発!」
 玖珠壱の声と共に扇子龍が旋風の勢いで周囲の魔獣を吹き飛ばした。
 荒い息を整えながら、視線を上に向ける。
 空に響く、奇妙な振動音。
 それは玖珠壱の視線の先、
 クロウレイダーが大きく回す鎖から。
 その音が変化すると、周囲の魔獣も大きく動きを変えた。
 魔獣を操るクロウレイダーの見下した視線と、未だ鋭い玖珠壱の眼光がぶつかる。




 烈弩の鎧は全身至る所に傷が付き、満身創痍の体を見せる。
 腕を伝い、肘の先から鮮血が玉となって落ちた。
 しかし、その呼吸は左程も乱れてはいない。
「もう間も無くか、螺触麗死悪」
 ナイアーの呟きに答えるように黒雲が渦を巻いて流れて行き、上空から今にも封印を抜き出ようとする螺触麗死悪の姿が露になる。
 その光景を見下ろすナイアー。
 そこに刃が走る。
 キイッン!
「余所見をしてて良いのかい」
 烈弩の菊一文字とナイアーの魔槍タイラントが競り合う。
「幾ら粘ろうが、終わりだ」
 烈弩の頬を血が伝い、鎧に落ちる。
「それなら終わらせてみな」
 魔槍が青い粒子を吐き出し、そこから放たれる衝撃波を後ろに下がって烈弩はかわす。
 傷ついた手を振るい血を払うと、刀を構え直す。
 間合いは十分、向き合う赤の烈弩と黒のナイアー。
 魔槍を構えナイアーが動いた。
 踏み込みは一瞬。
 距離を消し飛ばすような突進。
 強烈な刺突が烈弩を襲うが、体を捻って串刺しだけは避ける。
「くう」
 しかし完璧にはかわしきれず、腹部に傷が出来る。
 それでも何とか斬り返した烈弩の一撃もナイアーに見切られ、かわされる。
 互いに一撃を見舞うと二人は距離を取り、向き合う。
 腹部の傷は魔槍が放つ衝撃のせいか抉るような痛みが続き、眉根に付いた傷からの血が烈弩の視界を微かに赤く染める。
「時間を稼ごうとしても無駄だ」
 直撃だけは避け続ける烈弩に苛立ち、ナイアーが前に出ようとしたその時、兜の黒硝子の端が欠けた。
「誰が時間を稼ぐと言ったよ?」
 浅い傷だが、確かにナイアーの頬に刻まれた傷からは赤い血がすっと流れだす。
 小さく笑った単純な烈弩の挑発に、ナイアーは無言で答えた。
 外套を広げ、太く大きく、ごう、と息を吐き出す。
 烈弩の背にぞわりと這い上がるものがあった。
 霊力を持つ者が見れば、螺触麗死悪から放たれた力がナイアーに流れて込んでいくのが見えた事だろう。
 しかしその流れは見えなくても分かる程、大きかった。
 大河の様な力の奔流全てを、ナイアーの体が飲み込んでいく。
 その流れが途切れぬ中、ナイアーは魔槍の穂先を烈弩に向けた。
 螺触麗死悪の生み出す瘴気が深く沈んだ闇を生む。
 槍から発せられる粒子の渦がその勢いを増す中、ナイアーの右手が動いた。
 その場で振り上げた刃を落とす。

 重い、破裂音。

「があっ!」
 衝撃に、烈弩が弾かれた。
 兜の右の鍬形が砕け、ミネルバの甲板に転がる。
 甲板に叩きつけられたナイアーの力はミネルバの装甲を大きく傷つけ、更には直線上の雲に穴が空いた。



「ちっ、女が邪魔をしおって」
 苛立ちを吐き捨て、ドムはランスを明日那の腹から引き抜く。
 腹に大きく穴を開けた明日那の鎧だけがその場に音を立てて崩れた。
 中は、空。
「な、ぐうっ!?」
 悲鳴を上げてドムがその場に崩れた。
「やれやれ、修行が足りんぞ、瑠椎生(ルシーニュ)」
 どこか嗜めるような声で隠丸が言った。
「そう言わないで下さいな。この鎧、重いんですよ?」
 はきはきとした若い女の声。
 倒れたドムの背中を一瞥すると、そのは小柄な体に似合わぬ頑丈な作りの鎧通しを逆手に掴み、鮮やかな手つきで腰の鞘に収める。
「何故お前がここに。瑠椎生」
 絶突が驚きながらも思わず問い質した少女の名前は瑠椎生。
 隠丸の妹、そして葵麗駆主付きのくノ一である。
 しかし本来なら影舞乱夢に留学している筈であった。
 重い鎧を脱ぎ捨てて体が軽くなった為か、伏し目がちだがどこか印象的な目が微かに気色ばんでいる。
「それは、っと」
 答えようとした瑠椎生はドムの攻撃を後ろに飛んでかわす。
「よくもやってくれたな!」
「それはこちらの台詞」
 続く二人目の攻撃を高く跳んでかわすと、肩に乗せた盾の様な得物を下に向ける。
「風塵砲を撃つのも久々ね」
 口の中で呟くと得物の先から圧縮された空気弾を勢いよく放つ。
 その反動で瑠椎生の体がくるりと宙を舞った。
 そして悲鳴を上げる暇も無く、ドムの体が地面にめりこんだ。
「影舞乱夢に行ったのが明日那の方だからですよ」
 落ち着いた水色と白を基調にした忍び装束を揺らしつつ、静かに着地をして瑠椎生が答える。
「何と、初めからか」
 隠丸以外、焔組の全員が呆れ返ってしまっていた。
「最も、姫にはすぐ気付かれてしまいましたけど。他の皆さんは誰も気付かないのでそれはそれで面白かったですよ」
 明るく笑ってみせる瑠椎生。
「くそっ」
 大将狙いで突出してきたドムがせめても手近な敵を倒そうと動くが、いつのまにかその真横には隠丸の姿があった。
 拳を叩きつけるように、左腕の興津鏡を撃ち込む。
 まともに一撃を叩き込まれて、ドムの体が吹っ飛んでいった。
「ま、こうなれば仕方が無い」
 隠丸は敵の方に向き直ると静かに言った。
「精々暴れてくれよ?」
「はい、そうしましょ」
 軽い口調で兄妹のやり取りが終わったその時、絶突達は何かに反応するように空を見上げた。
「下がれっ!」
 絶突の声と共にその周囲の男達も慌ててその場を離れる。
 大轟音と共に飛んだきたのは衝撃波。
 衝撃が大地を走り巨大な溝を穿つ。
「うわあっ」
 大地が揺れ、割れた大地が、かわしきれなかった兵士達を飲み込んでいく。
「これが……奴の攻撃だというのか?」
 大地さえ砕く一撃にテスタメントは戦慄を覚える。
 そして見上げた視線の先には、切り取られたように雲を貫く穴がぽっかりと空いていた。
「おい、烈弩の姿が見えねえが……まさか」
「ええ、うちの大将なら空でナイアーと二人っきりの様で」
 江須の言葉に、スカルは目を見開く。
「おいおい……正気を疑うぜ」
「ま、あの人が勝てなければ、三国探しても相手になる人はいないでしょうからね」
 さも当然のように話す江須。
「はっ、それじゃあアレが最良の一手というわけだ」
「そういう事です」
「屋根が頑張ってんなら、土台が負けるわけにはいかんわな」
 にやりと笑いスカルは湾刀を構え直す。
 スカルの言葉に小さく頷くと、江須は瑠椎生を見た。
「さて、玖珠壱さんが苦戦しているようです、助力に向かって貰えますか?」
「了解です」
 瑠椎生は肩に乗せた風塵砲の前後を入れ替えて波浮板(ウェイブボード)形態にすると、その上に飛び乗った。
 僅かな時間、その場で滞空する。
 しかし次の瞬間には強い風を残して影も残さず飛び去った。
「僕は、そろそろこの花火をお仕舞いにしましょうか」
 瑠椎生を見送る間も無く撃ち込まれた砲撃をかわして江須は淡々と呟いた。



「粘るな」
 深い緑の色の全身鎧を着込んだ男が呟く。
 その戦士は先程、突撃部隊を指揮していた男だ。
 攻めあぐねているのか、その男達が掴みかけていた戦場の流れが止まっていた。
 大勢は凡そ着いた筈。
 だが、止めの一撃、最後の一手を詰め切れない。 
「全く、カラミティめ、何をしている」
 焦る様子も見せずにそう吐き捨てた。
「くそっ、この男強い」
 苛立った月の声。
 距離を保ち、正面に三軍鬼の月、豹、そして背後に空が陣取り、将軍格らしき緑の全身鎧の戦士を取り囲んでいる。
 しかし攻めあぐねているのか、動きが止まっている。
 ややあって、じろりと豹に男が視線を向けたその時、
 思い切りをつけて空が背後から間合いを詰めた。
 後ろから迫る牛刀を盾のように広がった小手で弾き、僅かに間をずらして襲い掛かってきた豹の大金棒も得物の大鎌で軽々と受け止める。
「くっ」
 大力の豹が全力で打ち込んだ大金棒が当たっても男はびくともしない。
 まただ。
 何度仕掛けようともまるで、分厚い綿を殴ったかのような手応えに豹は困惑する。
 それでも二人が足止めをして出来た一瞬に月が飛び込む。
 渾身の勢いで突き出される十文字槍。
 しかし待ち構えていたかのように跳ね上がった大鎌が、その穂先を両断する。
「くうっ」
「雑魚供がっ!」
 大きく振り回された鎌が、三軍鬼を弾き飛ばす。
 地面を転がりながら何とか体勢を立て直し、月は他の二人を見遣る。
 自らの槍と同じく豹の大金棒も砕かれ、無事なのは空のみ。
「はっ、見たか。この陸戦将フォビドゥンが作り上げた呪術甲冑ゲシュマイディッヒの性能を!」
 高らかに笑うフォビドゥン。
「空、武器を探します、それまで時間を」
 得物が無事な空に指示を出すとフォビドゥンに注意を向けつつ、何か武器は無いかと月は辺りに目を配る。
 その時足下に槍が刺さった。
 琥狼主の飛出槍。
「これを使え」
 無造作に琥狼主は豹にも自らの村正無頼星を投げて渡す。
「琥狼主様、すみません」
「下がっていろ、お前達」
 三軍鬼の後ろから真っ直ぐに歩み出た琥狼主がフォビドゥンの前に立ち塞がる。
「また無駄骨を折りに来たか」
「ふん」
 琥狼主は銀狼剣を腰から抜いて右手に構えると、前に出した右足をぐっと踏み込み、そのまま跳ね上げた。
 琥狼主の爪先に乗った土と石が飛び散り、フォビドゥンの顔に当たる。
「ぬっ」
 目晦ましかと思ったその刹那、跳ね上がったままの琥狼主の爪先から小刀が放たれた。
 思いがけない角度から真っ直ぐ飛んできた刃をフォビドゥンは小手で弾く。
 その動きに合わせて一気に間合いを詰める琥狼主。
 白銀の軌跡がフォビドゥンの喉元に迫るが鈍い音を立てて刃が弾かれる。
 間髪入れずに琥狼主は大きく下がり、距離を取る。
「ほう、なるほど」
 感心した様な声で呟いたフォビドゥンは間一髪の所で琥狼主にかわされた大鎌をゆっくりと持ちあげ構え直す。
「上官だけに、まあ雑魚よりかは動けるようだな」
 己が鎧に絶対の信頼があるのか、たっぷりと余裕を持ったフォビドゥンの動きを見ながら、琥狼主は銀狼剣を鞘に納める。
「どうした、やっと降伏か?」
 嘲りの言葉に一切耳を貸す事無く、琥狼主は肩鎧の先、髑髏の意匠が施された部分を外すと手に嵌め込む。
「つくづく、南蛮の戦士は発想が貧困と見える」
 相手に届かせる気が無い程の声で、ぼそりと琥狼主が呟いた。
「ふん、何をしようが俺の鎧は破れん」
「刃牙斗衆の技、舐めるなよ」
 肩鎧を手甲にすると指先から握り込み、拳を作る。
 何をしようが無駄な事と嘲笑するフォビドゥンの前で、琥狼主が腰を軽く落として構えた。
 前に出る。
 一気に距離が詰まり、先に動いたのはフォビドゥン。
 掬い上げるような大鎌の一撃が琥狼主を襲う。
 下からの攻撃を僅かな動きでかわすと、琥狼主は左の腕を真っ直ぐに伸ばし、当てる。

 どんッ。

「ガっ!」

 大きな呻き声をあげ、得物を振り上げたままよろめくフォビドゥン。
 呪術甲冑の腹部が大きく窪み、そこには拳の痕が残る。
 水月を狙い振った拳を淀み無く引き戻すと、琥狼主は一歩間合いを詰める。
「こんなものか」
「貴様ァ!」
 怒りに任せて薙ぎ払われた鎌を重心を後ろに逸らすだけで琥狼主はかわす。
 続け様に振り回された大鎌さえも見切ると、また掌が動いた。
 ぐわんと兜を叩いた音が響く。
「ぬうっ、ーっ」
 衝撃に揺れる視界。
 何とか反撃を。
 そうフォビドゥンが思った矢先。
 衝撃と共に、ぐちりと、嫌な音がした。
 その音の出所は喉元に突き刺さった琥狼主の拳の先。
 何か潰れる音と共に、フォビドゥンはたたらを踏んで後ろに下がる。
 声にもならぬ濁った音を口の隙間から漏らしながら、何とか琥狼主を睨む。
 その顔は血走った目と、口元から流れ出す血で、壮絶な表情が浮かんでいた。
 混乱していた。
 何故だ、新型合金を使った鎧も、対衝撃法術も、機能している。
 それでも防げない。
「一番の得物だ、防げると思うな」
 剣でも槍でも無く、琥狼主の一番の得意は無手。
 積み上げられた技がフォビドゥンの甲冑を貫く。
「があっ!」
 口から血を飛ばしながら叫んだフォビドゥンは大鎌に力を込める。
 法術が発動し、赤く光りだした鎌を頭の上で大きく旋回させると辺りの大気が巻き込まれ、円い刃の形を成していく。
 鮮血を泡立てながらもフォビドゥンが吼えた。
 勢いを付けて鎌を投げつける。
 唸りを上げて迫る衝撃を、琥狼主は前に出ると同時に深く、ぐんと体を沈めた。
 低く低く屈んだ琥狼主の背をかすめて刃が後ろに抜ける。
 フォビドゥンは小手から爪を引き出すと、体勢を崩した琥狼主に走った。
 沈めた体は、そのままに、琥狼主は前に体重を掛ける。
 琥狼主の体が一気に相手の懐に入った。
 体ごと、ぶつかる。
 そこで二人の動きが止まった。
 先に動いたのはフォビドゥン。
 血を吐き出し、その体がゆっくりと崩れる。
 そして琥狼主は鎧を貫いた両の拳を下ろし、体を起こした。
 フォビドゥンが地面に倒れ、ごぼりと血を吐き出すと、それきり動かなくなる。
 琥狼主はその光景を一瞥だにしなかった。





 風を切り裂き、瑠椎生が飛ぶ。
 霧で遠くまで見えないのが気に入らないが、それでも久々に全速力で飛ぶ事が嬉しく、一気に霧を突き抜ける。
 速く速く、白鳥の如く、真っ直ぐに、霧の中を飛び抜ける。
「わっ」
 突然、瑠椎生の眼前に蝙蝠の魔物が現れたが、咄嗟に波浮板で切り裂き、その勢いを殺すように回転。
 そのまま上昇すると波浮板を右に左にと切り返し、速度を押さえる。
 風を掴み、ふわりと浮くと、玖珠壱達の上を取った。
「瑠椎生?」
 その姿を認め、驚く玖珠壱を横目に瑠椎生は手近な魔獣を波浮板でかすめるように飛ぶと、瞬く間に切り伏せる。
「説明は後でしますから、玖珠壱さんはあの鴉を」
「え、ええ。分かりました」
 扇子龍を呼び戻し、突破を図る玖珠壱に魔獣が殺到する。
「行かせない!」
 押し包むように迫る魔獣の群れに、飛び込む。
 二振りの小太刀を盾の裏から抜き出すと、逆手に構える。
 波浮板の速力を上げ、すれ違う魔獣を次々と切り裂いた。風を読み、その速度を更に上げる。
 切り返し、そこから上昇、魔獣が反応するより速く。そして真上から一気に急降下。
「はあっ!」
 止まる事無く三匹を切り伏せ、更に飛び抜ける。
「乱れ苦無、雪崩落とし!」
 肩の鎧が上下に開くとその中にはずらりと仕込み苦無が並び、それを一斉に放つ。
 ばっ、と魔獣たちの視界に、苦無が広がった。
 逃げ場の無い面の攻撃に次々と苦しげな悲鳴があがる。更に瑠椎生は横の回転を波浮板にかける事で、辺り構わず苦無をばら撒く。
「女に自分の尻拭いか!」
 レイダーの鎖のついた鉄球が唸りを上げて玖珠壱に襲い掛かる。
 鉄球を沈んでかわすと玖珠壱は扇子龍を展開、八本全てを前面に浮かべる。
「手加減は出来んぞ!」
 棍を振るうと、扇子龍から水が溢れ出し、水柱になって天に昇る。
「呑みこめ、瀑龍!」
 八本の水柱が一つにまとまり、水の龍となってレイダーに牙を剥く。
「くっ」
 鉄球を回し、鎖で壁を作る。
 大気を震わせ、咆哮した龍が噛み付いた。
「うぉぉ!」
 押しこまれ、飲み込まれそうになるのを必死に耐える。
 暴れ回る龍が上を向き、レイダーの体を押し上げた所で動きが止まった。
「本命は、こちら!」
 龍の顎を突き破り、山伏姿の玖珠壱が姿を現す。
「疾!」
 電光石火の突きがレイダーの顔面を打ち抜く。
 袈裟、右払い上げ、唐竹、足払い。
「はあっ!」
 滅多打ちにして最後に突き飛ばす。
 後ろに吹き飛ばされるレイダーのボロボロになった黒い翼が何かに触れる。
「あ?」
「貫け! 扇子龍よ!」
 レイダーを囲んだ扇子龍が一斉に飛び掛り、レイダーを次々と貫く。
 悲鳴を上げるより早く、霊力が爆発した。



 残りの魔獣を片付けながら止めの閃光に瑠椎生は首をすくめる。
「あれは玖珠壱さん相当怒ってたのね」
 体中に傷を負いながらの容赦の無い攻め。
 荒い息を整える玖珠壱を見てそう思った。
「もう少し早く来れば良かったかしら」
 主が沈み、残された慌てふためく最後の魔獣を、瑠椎生が切り裂いた。




「姫、御無事でしたか」
 螺触麗死悪に弾き飛ばされた葵麗駆主は焔組と合流していた。
「ええ、それよりも兄上が」
 空を見上げる葵麗駆主。
「恐らくまだナイアーと一騎討ちを」
 ゲルフィニートとナイアーの狙いは世界を闇に染める事では無かった。
 それは二の次、よもや、異界を螺触麗死悪で吸い込み、その身に取り込むとは。
 そんな力を受け止められるとしたら。
『異界の存在』そのものを体に取り込む。
 どれほどの力を持つ事になるのか。



「殲滅! 殲滅だ! 1匹も撃ち漏らすなよ!」」
 青い鎧の男、砲戦将カラミティが叫ぶと、砲戦部隊のバスターダガー達がスカルの陣へと砲弾を撃ち込む。
 灰色の硝煙が吹き上がる中、その目が何かに反応する。
 躊躇う事無くカラミティは胸の熱線砲を空に向け、放つ。
 赤い火線が彼方の空に見える機影を捉えたかに見えたが、間一髪で標的は大きく左に旋回し、攻撃をかわす。
「単騎で来るかよ、面白い」
 空を見上げ、楽しげにカラミティが呟いたその時、背後の空気が突然揺れた。
 思わず前に飛び退くと、頭の後ろをかすめるように何かが通り過ぎていった。
 慌てて、振り返る。
 そこには振るった鉞砲を手許に戻す、江須の姿。
「なるほど、反応は中々」
 いつの間に、敵が陣地の只中に入って来た。
 有り得ない急襲に驚愕しながらも、カラミティの右手は既に動いていた。
 カノン砲が江須に向けられる。
 砲塔から江須は飛び上がり、逃れる。
 その動きに追いすがろうとカラミティが上を向いたその瞬間、目の前が歪んだ。
 それと同時に大きな衝撃。
「ぐおっ!?」
 突然、車に轢かれた。
 体の上に圧し掛かる小型の戦車。
 カラミティは自分の目を疑った。
 何も無かった筈の場所からそれは現れた。
 法術か?
 体を捻り逃げようとするが、戦車の上に江須が着地すると、そのまま新鉞砲をカラミティに向ける。
「くおおっ」
 力を振り絞り、戦車から逃れる。
 放たれた江須の一撃がカラミティの頭の横をかすめていった。
 その場を転がり、離れる。
 間近で起こった爆発で視界が点滅する中カラミティが顔を上げると、そこには江須の姿が無い。
 逃げたか、いや、姿を消したのか。
 突然自陣の深くに切り込んでこれた理由がこれか。
 大きく飛び退き、素早く辺りを注視する。
 空からの攻撃は恐らく陽動。
 姿を消した戦車が自分へ近づくまでの時間稼ぎ。
 カラミティの視界の右端に違和感。
 僅かに歪む空間、小さく巻き上がる土煙。
「そこかっ」
 間髪置かずに、カラミティは空気の歪みにカノン砲を撃ち込んだ。
 着弾の煙の中から、小型の戦車が空間を歪め、現れた。 
 現れたのは戦車だけ。
 その視界に影が差す。
「これも陽動、だ……と」
「中々では、この程度ですかね」
 カラミティの背後から江須は淡々と評価を下す。
 先程の空に見えた機影が真上を通過して行き、そこから飛び降りた江須が得物を引き抜いた。
 ぐらりと、青い鎧を着込んだ体が揺れる。
 肩口から胸にまで達する深く抉れた傷。
 そこから引き抜いた大斧を江須は大きく振るい、血を払う。
 口から血を流し、カラミティは地面に崩れ落ちた。
 
 地面に倒れた指揮官とそれを見下ろす江須。
 余りに突然の、そして考えだにしなかった光景を目の前にして、周りを囲む砲撃部隊は咄嗟に動くことが出来ない。。
 その戸惑った空気を打ち消すように、突然何かがダガー達の只中に落下して土煙を巻き上げる。
 煙幕の途切れたそこには黒焦げとなったレイダーの姿があった。
「馬鹿な、レイダー様まで!?」
 慌てふためく兵士達の前で江須は分離させた幾攻守を呼び戻し、再び身に着ける。
「既にフォビドゥンも討ち倒しました」
 更なる宣告に兵士達は動揺を隠せない。 
「ナイアーは我が大将と一騎打ちの真っ最中。その勝敗いずれのものになろうとも、今ここで相手になるというのなら、その首、幾らでも吹き飛ばすものと知れ!」
 芝居がかった声で張り上げた江須の言葉だが、目の前に倒れる二人の将の姿が凄みを持たせる。
 気圧された兵達は武器を構える事も出来ず、その場に立ち竦んだ。
 江須は軽く呆れたように息を吐くと、ざっと辺りを見回した。
「さて、下の方は何とか持ちこたえられそうですかね」
 指揮官が次々と倒れた事で南蛮兵達の動きが次第に鈍くなっていく。

 その時だった。

「あっぐっ」
 顔を真っ青にして、葵麗駆主が呻き、頭を抑える。
「結局は、捨て駒にもならんか」 
 低く押し込める声でゲルフィニートが呟いた。
「姫様!?」
 慌てて駆け寄ろうとした阿吽修羅も何かに抑え付けられたように動きを止める。
 阿吽修羅だけでは無い、その戦場に立つ全ての者の動きが止まった。
 一瞬呼吸が止まり、それでも何とか吸い込んだ大気まで、今までと異なったかのように重い。
「けたたましい音を立てる……!」
 葵麗駆主の苛立った声。
「これ程の……物とは」
 空を見上げ、スカルは搾り出すようにして声を発した。
 戦場に立つ全ての者がそちらを見た。
 次元の違う何かが、そこにいる。
 見上げた空に広がる霧がごうごうと渦巻く風に飛ばされていく。
 突然、それまでの灰色の世界にそぐわぬ赤色が現れる。
 流されていく霧の向こうに、それはいた。
 どす黒い赤とでも言えばいいのか、見る者を怯ませる、濁った色。
 鎧の如き光沢を放つ花弁から束になった何千何万もの触手を伸ばし、揺らす。
 誰もがその目を疑った。
 まるで城の様な巨大な華が宙に浮かんでいる。
 そんなものは、そこに、
「あるべきではない」
「あっては、ならない」
 生物の本能か、それとも理性が囁くのか、威容が体に恐怖を覚えさせ、縛り付ける。
 大穴の底から、ぞろりと全身を抜き出した螺触麗死悪の姿がそこにはあった。

 ぐうんと、大きく螺触麗死悪が震えた。

 高い高い音をたて、全身を蠢かす。
 思わず、皆耳を塞いだ。
 体に叩きつけられる鳴き声にも似たその鳴動が止まると、もう一度螺触麗死悪がぐんと震える。
 それと同時に、闇が、染みこんできた。
 いきなり、螺触麗死悪の周囲の何も無い所から闇が染み出していく。
 それは島を包み込む闇の霧よりも深く、一瞬にして空を飲み込んだ。
 じわりじわりと染め抜くように、それでいて奔流が全てを飲み込むより速く。
 世界が、闇に襲われていく。


 夕闇の迫る赤流火穏の大地を吏死低阿が走る。
 その進行を食い止めようと立ち向かう江須に似た鎧の男達は、大気の震えに思わず空を見上げた。
「なんだぁ!?」
 東から迫る闇が、空を見る間に飲み込んでいく。
「兄者、もしや江須達に何か……」
「くそっ、何が起きてるんだ」

 同時刻の影舞乱夢でも同じ現象が起こっていた。
 禍々しき光に弾かれ、崩れた陣形を立て直していた影舞乱夢の兵達の眼前に闇が広がり、空が黒に染まっていく。
「黒須暴隠島が、落とされたのか……?」
 誰かが発したその問いに、答える者は誰もいなかった。

 二つの国と同様に、天宮の空もまた、深淵の闇に覆われようとしていた。
 馬上の烈火頑駄無大将軍の目からも闇が西の空から広がっていくのが見える。
「殿、あれは」 
 手綱を緩めずに戦場へと走る烈火の横に着いた、同じく馬上の将が問うた。
 僅かに視線を上げて空を見遣ると、すぐにまた正面に戻す。
「ああ」
 短く答え、烈火は無言で馬を走らせる。



 呆然と螺触麗死悪をみつめる男達の前で大樹のような触手が一斉に震え、地面に突き刺さる。
 大地が揺れ、細かく分かれた螺触麗死悪の触手が死体を探り当てると、突き刺さる。
「最早脆弱な兵など不要。目覚めろ、我が下に来たりし魂よ!」


「死体を……まさか!」
 テスタメントは先ほど倒したばかりのドムトルーパーがずるずると体を蠢かせ、起き上がろうとするを目の当たりにして驚く。
「死者が、甦るというのか……」

 空を包む闇の濃さが一段と増し。
 大地は不気味な揺れを続け、雷のような地鳴りが耳を突く。
 喉を通り抜ける大気は重い。
 手足を動かそうにも鉛を飲むような呼吸しか出来ず、指一本動かす事でさえも難しい事のように思えてしまう。
 それ程までに圧迫された空間を生み出す螺触麗死悪の威容に皆が圧倒されていた。
  


「もう、お仕舞いなのか……」
 誰かの吐き出した言葉には絶望が強く滲む。
 花弁が震え、大気が揺れた。
 触手がうねると、その巨体がゆっくりとスカル達の陣へと動きだそうとしていた。 
 その光景に皆が息を飲んだ、その時だった。

「ブハハハ」

 戦場に高らかな笑い声が響いた。
 重く粘りつく、泥のような空気の中、その声ははっきりと聞こえた。
 その声の主は、集まる視線など意に介せず、不遜な笑みを浮かべ、男達の間を確かな足取りで歩いていく。
 そして、黒い外套を揺らし、隠丸は螺触麗死悪へ正対すると、呆れたように頭を振った。
「いやはや、何故皆がこやつに恐れているのかと思うと、つい、申し訳無い」
 飄々と、うそぶいてみせると一旦そこで言葉を区切る。
「さて、別に地が砕け、天に松が生えたわけでもありますまいに。何を戸惑う事がありましょうか」
 何一つ気負わぬ風の、隠丸の言葉。
 男達も、余りにその場にそぐわぬ、その言葉と声に驚き、また先程とは違った意味で動きが止まる。
「そうだな、その通りだ」
 手甲を打ち付け合い、金属のぶつかる音を鳴らす。
 琥狼主もまたしっかりとした歩みで男達の前に歩み出た。
「眼前に敵がいるぞ。それだけで充分だ」
 簡潔に現状を纏めると、感情を抑えきれないとでもいう様に笑った。
「しかし……」
 呆然としたテスタメントの横で、また拳が打ち付けられた。
 鋼の拳が悠然と動く。
「御心配無く、そこまでちょっとお花を摘んでくるだけですから」
 穏やかな、阿吽修羅の声。
 背中の重装備から駆動音を鳴らし、琥狼主の横に並んだ。
「ねえ? 磨駆参」
 阿吽修羅が振り向けば、そこには双戟を担いだ斎胡磨駆参の姿。
 おう、と短く答えると、双戟を地面に突き立て、そこに仁王立ちとなる。
 早、威風さえ漂わせ始めたその背中を見上げるスカル。
「御不安ですか?」
 声のした方を向くと、江須が自分の横を通り過ぎていく所であった。
「何、数の上では九対一。圧倒的ですよ」
 ぐるりと首を回し、軽く言ってのける江須。
 思わず目を見開くテスタメントの横で、スカルが笑い出した。
 その時、空から強い風が吹きつける。
「まあ、どんと大船に乗ったつもりで、見ていて下さいな」
 波浮板の先端を掴んで巧みにその場に留まりながら、瑠椎生はスカルに微笑みかける。
 その横には達観した表情を浮かべる玖珠壱の姿。
「全く、大した奴等だよ、お前らは」
「お褒めの言葉、有難う御座います」 
 未だ笑いが止まらぬスカルの言葉に、やはり葵麗駆主も笑って答える。
「それは褒め言葉になるのでしょうかね」
 二人の掛け合いに呆れた顔をするのは絶突。
「掛け値無しだ、保障してやるよ」
「これ以上調子に乗られても困るのですがね」
「何を言われようが、関係有りませんよ、この人達はね」
 頭を振り、諦めの言葉と共に吐き出した玖珠壱の溜息が空に散る。
「まあ、私もではありますがね」
 その言葉にからからと瑠椎生が笑った。
 絶突もまた小さく笑い、螺触麗死悪の方を見る。
「お前達はスカル候の指揮下に入れ。こちらは、任せろ」
 絶突が部下に指示を出したその時、目の前の大地が裂けた。
「何だ!?」
 ずらりと並んだ牙、大人など一飲みにしてしまいそうな頭。
 大蛇、否、螺触麗死悪の、牙持つ触手が大地を突き破り、襲い掛かる。
 その時、影は既に動いていた。
「うわっ!」
 突然の襲撃に思わず男達は怯み、眼を持たぬ触手は鎌首をもたげ、男達を見下ろす。
 その頭上に影。
 
 ガウッン!
 
 拳ごと撃ち込まれる、興津鏡。
「落ちろ」
 呟き、引鉄を押し込む。

 ドンッ!

 大筒の反動を乗せた隠丸の一撃をまともにくらってはひとたまりもなく、押し潰された触手は地面に埋まって動かなくなった。
 だんっと地面に降り立つ隠丸。
 その光景にスカルの兵達が湧き上がった。
「全く、派手な隠密だ」
 螺触麗死悪へ向かいながら絶突はぼやく。
 隠丸は、それを聞いて大きく、高笑い。
 式符が飛び、倒れた触手に張り付く。
 そこから業火が勢いよく溢れ出す。
 炎の照り返しで赤く染まる大地。
 影を揺らし、葵麗駆主は歩く。
 進む先は天に居座る妖華。
 風が、一段と強くなった。
 高く空に舞い上がる者。
 地を踏みしめ進む者。
 仇同士が向き合う。
 張り詰めた空気。
 ひり付く大地。
 歩が止まる。
 向き合い、
 そこで、

「さあ」

 りんと響いたのは、葵麗駆主の声。
 その顔に浮かぶのは、どこか笑みにも似た表情。
「推して参りましょう」
 号令に各々がそれぞれの言葉で応えると、焔組が疾った。




「まだ、足掻くか」
 呟いたのは、ナイアー。
 魔槍を烈弩に向けたまま、眼下の気配を察したか、そう呟いた。
「ここまで足掻いたんだ」
 答えるのは、烈弩。
 だらりと大太刀を構え、先刻と変わらぬ声で答える。
「やるだけやったら、後は野となれ山となれだ」
 黒雲よりも更に高く、空に浮かんだ舞台の上で二人が向き合う。
 その真下には、螺触麗死悪が花弁を伸ばし、更にその下には曖昧模糊とした 洋とは知れぬ世界を映し出す魔界への大穴が、ただただ大きく広がっていた。









登場人物紹介






隠密飛燕 瑠椎生 (オンミツヒエン ルシーニュ)

葵麗駆主付きの護衛兼隠密を務める少女。
得物は圧縮された空気を撃ち出す風塵砲は、
形体を波浮板に変えれば高速で飛行も可能。
身の軽さは親譲りで、その性格は明るく気立ても良いが、
葵麗駆主の気紛れを諌めるどころかも嬉々として付き合うところ等は、
やはり兄である隠丸とよく似ている。
特技は波浮板を使った風乗りと変装。








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